失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 私も同じ誓約をする。
 繋いでいた両手を離し、ブーケをスタッフに渡し、手袋を外す。

「指輪の交換を」
「新郎から新婦へ」

 貴一さんは、私の左手を取り、薬指に結婚指輪を嵌めた。
 私たちは一年前に籍を入れてからずっと結婚指輪を嵌めていた。結婚式のために久しぶりに外し、一年の間に多少ついてしまった傷を磨いてもらったのだ。
 左手の薬指に嵌められた指輪は、籍を入れたときと同じくらい輝いている。

「新婦から新郎へ」

 私もリングピローから指輪を取り、貴一さんの薬指に嵌める。
 一年前から比べて指が太くなったのか、関節で引っかかってちょっと焦ったが、なんとか指の根元まで通ってくれて安堵する。

 そういえば彼は、結婚してから体重が増えたと言っていた。
 見た目にはまったくわからないし、むしろ美形度は結婚してからの方が上がっている気がするが、それを言えば、毎日妻の美味しいご飯を食べているからだよ、と返された。

「それでは、誓いのキスを」

 貴一さんが私のベールを上げて、顔を近づけてくる。
 私が目を瞑って待っていると、彼の唇が重ねられた。ちゅっと啄むように唇を舐められて目を開ける。
 目が合い、微笑み合うと、たくさんの拍手が贈られた。

 結婚の宣言がなされ、結婚誓約書にサインをした。

「ここに、お二人の結婚が成立したことを宣言いたします」

 皆の拍手で祝われ、結婚誓約の祝歌が贈られた。
 参列者が起立し、退場の合図でバージンロードを歩く。
 ようやく緊張の時間が終わったと安堵しながら、皆からのフェアリーウィングシャワーを受けた。

「おめでとう!」
「ありがとう~! あ、拓実~いっくよ~!」

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