失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 私は参列者の中に立つ拓実の姿を見つけると、そちらに向かってブーケを投げた。

「うぉっ、びっくりした!」
「あげる~! 早く恋人できるといいね!」
「……おぉ、サンキュ」

 私が笑いながら手を振っていると、隣に立つ貴一さんが苦笑した。

「……瑠衣もなかなか残酷なことをするね」

 そんな彼の言葉は、参列者からの祝いの嵐で耳に入ってこなかった。


 挙式披露宴を終えて、友人たちに挨拶をした私たちは、予約したホテルへと向かった。
 自宅に帰ると、貴一さんのためについ料理をし始めてしまう私を労うために、わざわざホテルを予約してくれたらしい。

 披露宴ではとてもじゃないが食事をする余裕はなかった。
 緊張していたからか空腹も感じずに済んだが、二十一時を過ぎているというのに、今頃になってきゅるきゅるとお腹が鳴る。

「なにか頼もうか?」
「うん。ダイエット頑張ったから、今日からがっつり食べたい!」

 貴一さんがベッドに腰かけ、ルームサービスのメニューを広げながら言った。
 私も彼の隣に座り、メニューを覗き込む。

「ははっ、たしかに痩せたよね。腕も腰も細くなった」

 私の二の腕に触れている貴一さんは、やや残念そうだ。
 細くなった腰をするりと撫でられて、引き寄せられる。私はドキドキしながら、貴一さんの肩にもたれかかった。

「そうなの。三キロも落としたんだから。おもにこの辺が変わったと思わない?」
「うん、本当だね」

 私がお腹の肉を摘まむと、彼の手が重ねられた。
 二人で暮らして一年経っているのに、こうして近くにいるだけで私の胸は高鳴るし、近づけば近づくだけ触れたくなる。

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