失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません

 交互に髪と身体を洗い、化粧を落とした。結婚式のためにいつもよりもだいぶ濃い化粧をしていたから、洗い流すとすっきりする。
 そうしているうちに、バスタブに半分ほどのお湯が溜まった。

 貴一さんは、背後から私を抱き締めるようにバスタブに浸かった。
 彼の身体にもたれかかると、私の二倍はありそうな太い腕が前に回される。

「瑠衣、好き、可愛い」

 囁くように言われて、うなじに口づけられる。
 くすぐったさに身を捩ると、顎を持ち上げられて唇が重なった。
 口腔を丁寧に舐め回され、キスの心地好さに頭が陶然としてくる。昂ったものを背後から押し当てられると、私の身体はいよいよ引き返せないほどに熱を持つ。

「ん、もう……貴一さ……っ」

 張った湯がちゃぷちゃぷと波打ち、呼吸が荒くなっていく。

「ね、瑠衣」
「ん……」

 バスタブの縁に腕を突く私に後ろから覆い被さった彼は、耳のすぐそばで荒々しい息を吐きながら身体をぴたりとくっつける。

「そろそろ、子ども考えない?」

 彼の言葉の意味に気づき、頬に熱が籠もる。
 結婚式があるからと避妊してくれていたけれど、私は結婚してからずっと貴一さんとの子どもがほしかった。

「私も、貴一さんの、赤ちゃん、ほし……っ」

 言うが早く、熱い剛直に貫かれる。
 身体が揺さぶられて、頭の先からつま先まで彼の熱に埋め尽くされていく。
 それが泣きたいほどに幸せだった。

 貴一さんと二人の生活も十分に幸せだけれど、まぶたを落とせば、私たちの間に眠る小さな命を思い浮かべられる。
 そんな日がいつか来ればいい。
 そう思いながら、私が彼の熱に包まれていったのだった。

 了
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