年下上司の溺愛は甘すぎる
誰もいないリビングで私の声だけが耳に響いた。
部屋の中には大好きな婚約者のために準備しているオムライスの香りが漂っている。
それが無性にバカらしく思えてきた。


プロポーズされて婚約者となった私たちなのにそんなことありえるのか、と何度も心の中で自問自答を繰り返す。
それにあんなに優しくて私をとびきり甘やかしてくれていたあの光輝が？


「信じられない⋯⋯」


三年半も付き合っていながら今更こんな裏切りなんて信じられない。
それにプロポーズして婚約者という立場の人間がいるにも関わらずそんなことするだろうか。


「瀬奈〜？ご飯できてる？」

「あ、うん！もう少しでできるから待ってて！」


急いでスマートフォンを元の位置に戻す。
高ぶってしまった心臓の鼓動を抑えるように小さく深呼吸をした。
正直、今すぐに問い詰めたい衝動に駆られるものの、自分が冷静じゃないため言い訳されるだけで終わってしまいそうだ。


何も知らない光輝はリビングに戻ってくると、いつものようワシャワシャとバスタオルで髪を豪快に拭いていた。
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