大嫌いで大の苦手な強面上司が私だけに優しくしてくるなんて聞いていない
「ああ! すみません! タイヤがパンクしてしまって……!」
「ちょっと見させていただきますんで、レッカーであの屋根があるとこまで移動しますね!」

 レッカーで屋根がある場所まで一旦移動してから改めて本条部長の車の状態を詳しく見る為に検査が始まったので私も本条部長と共に車から降りた。つなぎを着た作業員がじっとパンクしたタイヤ周辺を目視したり器具を当てたりしている。
 検査が終わると作業員がうーーんと首をかしげながら本条部長へと遠慮がちな声をかけた。

「ああ……パンクもですけどタイヤの部品がちょっと壊れてますね。これは車ごと修理に出さないといけないです」
「そうですか……あの、代車は」
「それが今すぐには手配できなくて」
「そうですか……」
「一般道まではこの車に乗って移動してください。料金所に到着したら事情説明しますのでその時にどこから乗ったかとかも一緒にご説明出来たら」
「わかりました」

 本条部長の車はレッカーで運ばれ修理に出される事となってしまった。もう1人の作業員は口をぽかんと開けながら本条部長の車を物珍しそうに見つめている。

「これ、外車ですよね」
「はい、そうですけど……」
「いやあ、すんごいかっこいい車ですよね。俺もこういう車乗ってみたいなあ……」
「いいですよ外車は。やっぱり乗ってて気分があがりますから」
「ですよね?! いやあ、俺の仕事へのモチベーションが上がりますねえ……!」
「こら、相手の方の車は壊れてんだぞ」

 とメインに対応していた作業員から肩をぽんと叩かれながら呆れた口調でそう言われていたのだった。
 救援車に乗り込んだ私達はそのまま一番近い料金所に降りてスタッフに事情を説明した。するとスタッフが丁寧に対応してくれてその場で料金を支払う事となったので本条部長が現金払いで支払ってくれた。
 しかし。

「これからどうしましょうかね……」
「お客さん、電車は止まってるみたいですよ。タクシーも出払ってるでしょうなぁ」
「そうなんですか?!」

 まさか電車も止まっているとなると……どうしたらいいのか?!

「部長……」
「わかりました。近くに宿泊できる場所はありますか?」
「ああーー……ホテル街なら近くにありますよ」
「そうですか。ありがとうございます。まおさん、今日はそこで泊まりましょう」

 電車も出ていないなら泊まるより他無い。私はわかりました。と言うしか出来ない。

「ではホテル街までの道のり教えてくださいますか?」

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