となりの最強魔王さま
 
 それからしばらくは平凡な日々が続いた。

 理玖の衝撃的な姿とともに始まった高校生活は、予想に反して穏やかに過ぎていく。
 優里は同じクラスになった理玖のことを注意して見ていたが、あの入学式以降、彼におかしな様子はない。喧嘩をするどころか誰かと言い合いをすることもなく、成績優秀な彼の周りには男女問わずいつも人が集まり楽しそうにしていた。

 一方みんなの中心にいる理玖はというと、小学生の頃に戻ったかのように優里にベッタリであった。
 登下校をともにするのはもちろん、放課後や休みの日なども理玖が優里のもとに押しかける形で一緒に漫画を読んだり、ゲームをしたり。

 高校生になり、優里は二階に一人部屋を与えられたのだが、そこが隣の家の理玖の部屋とちょうど向かい合わせになっていたため、夜には互いの部屋の窓を開けてお話をすることもある。

 そして三年間離れていたにも関わらず、それを感じさせない理玖の距離の詰め方によって、優里も気づいたら彼と過ごすのが当たり前の日常になっていた。

 学校で瞬く間に昔と同様に理玖とペア認定された優里としては、高校生にもなって付き合ってもいない男女がこんなに一緒にいるのはどうなのかと疑問に思うことはあっても、周りと馴染めたのが理玖のおかげなのは事実だったので、文句を言えるような立場ではない。

 目立つ理玖の隣にいると、当初は彼に好意を寄せる女子たちからの好奇の目にさらされたり、やっかみ半分で噂されることもあったが、どちらかというと理玖側が積極的に優里をそばにおこうとしているのが誰の目から見ても明白だったので、気がつくと変に騒ぎ立てられることもほとんどなくなっていた。



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