となりの最強魔王さま

 ――そんなある日。

 優里が放課後、先生に呼び出された理玖を教室で待っていたところ、知らない女子生徒に声をかけられた。

 そして近くの空き教室まで半ば強制的に連れて行かれたかと思うと、扉を後ろ手で勢いよく閉めた彼女が急に金切り声をあげる。

「あなた立花くんの幼馴染かなんなのか知らないけど、目障りなのよ! 彼の周りをうろちょろするの、やめてくれない?」

 長い黒髪を翻しながら捲し立てる名前も知らない女子生徒に優里は思わず困ったように眉を下げた。

 理玖に好意を寄せる女子が数多くいるのは知っているし、実際告白されている場面を見たことも何度かある。だけど、こうして優里に直接突っかかってくる人はいなかったのだ。

(なんだか漫画みたいな展開……)

 思わず現実逃避してそんなことを考え始めた優里に気づいたらしい。
 目の前の女子生徒は、これでもかと言うほど眉尻を吊り上げた。

「ちょっと、聞いてんの!? あなたに言ってるんだけど! 大体あなたみたいな女、立花くんに釣り合ってないから。身の程をわきまえたほうがいいよ」

 喚き散らかした女子生徒が、憤慨したように顔を真っ赤にしながらズカズカと優里の目の前へやってくる。
 そして彼女の手が不躾に優里のもとへと伸ばされた瞬間。





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