となりの最強魔王さま
 
  理玖に手を引かれるまま連れて行かれたのは、幼い頃によく遊んだ家の近所の公園だった。

「ゆうちゃん、怖い目に合わせてごめんね」
「大丈夫だよ。迎えにきてくれてありがとう」

 優里がそう言うと、理玖はコクンと頷いた。
 
「僕は、ゆうちゃんのことを守りたくて……中学に入ってから、もっと強くならなきゃって思ったんだ。それで柔道部にも入ったし、喧嘩を売られたりしたら、積極的に買うようにしてた。結局噂がまわって、余計に突っかかってくる人が増えたり、変なあだ名をつけられたりしたけど……それでも、健太郎くんにも、他の誰にもゆうちゃんを奪われたくなかった」
「わたしのため?」
「そうだよ。ずっとゆうちゃんが好き。ゆうちゃんだけが……」
「わたしも、昔からずっとりっくんが好きだよ。さっきは嫌いなんて言ってごめんなさい」

 優里のその言葉に、理玖は心から嬉しそうに笑う。

「でも大っ嫌いって言われて、傷ついたよ」
「うん、本当にごめんなさい」

 優里が申し訳なさそうに頭を下げているというのに、理玖はイタズラを思いついたかのようにニッと口角を上げた。

「傷ついたから、ここでゆうちゃんからキスしたら許してあげる」
「え?」

 驚いて思わず顔を上げたが、理玖は言葉を撤回することもなく、ゆっくりと目を閉じた。
 パニックになりかけた優里だったが、なんとか深呼吸して心を決めると、ままよと理玖に触れるだけのキスをする。

 一瞬だけ唇が触れた後、真っ赤な顔で文句を言おうと口を開いた優里だったが、その言葉は彼から返ってきた深い口づけに呑み込まれてしまった。

 それは、先ほどの触れるだけのような生優しいものではなく、口内全てを貪るような深いキスで、しばらくした後に解放された優里は肩で息をし、涙目になっていた。

「どこで覚えたの、こんなこと」

真っ赤な顔でそう呟いた優里に何も言わず、ただ怪しげに微笑んだ理玖は、やっぱり魔王というあだ名にふさわしいのかもしれない。

 それでも、そんな魔王な幼馴染のことが、優里は変わらず大好きなのだ。


 抱き合う二人の息が、再び混ざり合った。







 

< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop