となりの最強魔王さま

 優里が幼馴染の立花理玖と出会ったのは、四歳の頃だった。

 母親の「そういえば隣に同い年の男の子が引っ越してきたみたいよ」という言葉はその頃夢中になっていたお人形遊びに忙しくて聞き逃してしまったのだが、その日の夕方には、引っ越してきたばかりのお隣さんがおうちに挨拶に来てくれたのだ。

 線が細くて美しい母親に促され、隠れていた足元から出てきたのは、幼いながらにハッとするような美しい顔をした男の子だった。
 白い肌に映えるビロードのような美しい瞳、それを取り囲むけぶるような長い睫毛。緊張からか、瞳いっぱいに涙を溜めて今にも泣き出しそうな顔をしている。

 その頃ハマっていたおひめさまのお人形よりもよほど美しい彼に、優里は一瞬で心を奪われた。

「かわいいっ!」
「やだ、この子ったら。ちゃんと挨拶しなさい」
「おぎのゆうり、よんさいです。おなまえなんていうの?」
「……りく」
「りくくん? よろしくね!」

 幼い優里が無邪気に笑うと、目の前の理玖もつられたようにはにかんだ。

 それから一緒の保育園に通い始めた理玖のことを、お姉さんぶりたいお年頃だった優里は構い倒した。

 保育園の庭の隅で一人丸くなっていた理玖の手を引いてみんなの輪に連れ出したり、嫌いな食べ物が多くて食事のスピードがゆっくりだった理玖が食べ終わるまで待ってあげたり。
 常に手を繋いで一緒にいたので理玖も次第に優里に懐き始め、「ゆうちゃん」と呼んで笑顔をたくさん見せてくれるようになったのだった。



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