元地下アイドル、異世界で生きぬくために俺様王子の推しを目指します。
それにしても可愛いお洋服だ。コンカフェでバイトする時に着ていた制服とはまた違った、クラシカルな可愛らしさ。
薄桃色のワンピースは膝丈で、フリルやリボンといったカワイイあしらいが多い。髪型も栗色の髪を編み込みツインハーフアップにしてリボンで飾り付けてもらった。元アイドルの自己分析からしても解釈一致の系統だ。
対して恵梨さんを見ると、わたしのワンピースから幼さを抜いて上品さと気品さを足したような、丈の長いワンピースドレスを着ていた。
深緑の上質な生地と、首元から肩口にかけて編まれた黒いレース生地が上品で大人っぽい。ゆるく巻かれたポニーテールを含めて、黒髪の恵梨さんの凛とした雰囲気によく似合っている。
さすが王宮勤めの侍女……。抜群のセンスだ。
「朝食のご用意をいたします」
わたしが侍女たちの仕事ぶりに上から目線で感心しているうちに、優秀な2人は手際よくテーブルへ料理を運んできてくれた。
パンとスクランブルエッグ、カリカリのベーコン。香り立つかぼちゃのスープ。大窓から射す朝日に照らされて、異世界の朝食は輝きを放っていた。
世界が違っても、こういうTHE朝食は共通なんだなあ。昨晩は味わう余裕なく眠気に負けてしまったから、存分に味わおう。
「おいひい、おいひい……。五つ星レストランの味がします……。行ったことないけどきっとこれは五つ星です。シェフの方にどうかお礼と賞賛をお伝えください」
「……かしこまりました」
「ふわあ〜、恵梨さん。このパンすごく美味しいですよ」
「そうですね。こんがり焼けた表面のパリパリと、絶妙な塩加減が癖になりますね」
グルメリポーター並みの恵梨さんの言語力によって、わたしの語彙のなさが際立ってしまった。料理を褒め称える最上級の言葉が『五つ星レストラン』なわたしとの差が辛い。
「しっつれいしまぁ〜す」
朝食を食べ終えた頃、シャーロットさんが縦ロールを揺らしながら部屋に入ってきた。
「おはよーふたりともぉ。昨日はよく寝れたかなぁー?」
「おはようございます!はいっ、あんなに寝心地最高なベッドは初めてでしたっ」
「それはよかったぁ〜」
シャーロットさんは恵梨さんの方に目線を移すと、その顔を見てふんふんと頷いた。