元地下アイドル、異世界で生きぬくために俺様王子の推しを目指します。


わたし、トラックに轢かれて死んだ……わけでは、ない?


少なくともここは天国でも日本でもなさそうーーと思うのは、少し遠くの玉座で偉そうに踏ん反り返ってこちらを見下ろしている、先程の声の主らしき男性を見たからだ。


輝く銀髪と、燃えるような赤い瞳。

絶世の美女といって偽りない整った顔立ちは、野生的な雄々しさを感じられるその眼差しと合わさると、まるで神の遣いの一匹狼のようなーー迫力のある美しさを誇っていた。


「あっれぇー? シャーロットちゃん、もしかしてやらかしちゃったかんじぃ?」


と、そこで、場違いなほど陽気な女性の声が飛び込んできた。

見ると、これまたアニメなんかでしか見たことがない、見事なピンク頭の縦ロール美少女が現れた。


彼女は興味深そうにこちらへ近づいてきて、ふんふんとわたしとOLさんを見比べている。


「え、誰……? ここどこ?」


ようやく目覚めたOLさんも、ぱちぱち瞳を瞬かせて周囲を見回している。

唯一、その腕の中の子猫だけが心地よさそうに喉を鳴らしてゴロゴロしていた。


「んー。神獣はしっかりそっちの黒髪の子と“繋がって”るねぇ。だとしたら、君がおまけでついてきちゃった感じかなぁ?」


縦ロール美少女がわたしを見て言った。

え、おまけ……?



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