僕らの半年戦争~one chance more chance~
始動
気づけば、真木と別れてから1時間ぐらい経っていた。
帰り道。私は自転車を押して夜道をゆっくりと歩いていた。なんだかそんな気分であった。
『一緒に再演しないか?』
楠木カフェでの出来事がまだ頭に残っている。
あまりにも突然で、返事を待っている真木に私は何も言えなかった。
『今答えたくなければまた後から聞かせて欲しい』
いつもヘラヘラ笑っている真木にしては珍しく真剣な眼差しであった。
その言葉に私は「わかった」という言葉で返すしかなかった。
その後はいつもの真木に戻り、夕暮れまでくだらない雑談をしていた。何を話したのかよく覚えていないけど。
でも、手にじんわり汗をかいていた。
目の前がチラチラしていた。
呼吸が気持ちよかった。
アドレナリンが大量に分泌されているのが分かる。
自分でも何をしているのか、何を考えていたのか分からない。
ただ、無意識のうちに口走っていた。
『再演したい。やりたい』
話の脈略関係なしに出た言葉。
真木はポカーンとしていたけど、またヘラヘラ笑い『やろうか』と一言声を掛けてくれた。
あのやり取りが鮮明だ。
家に着いたとき、一気に階段を駆け上り、ドアを開け、洗濯物にダイブした。
気持ちがよかった。