僕らの半年戦争~one chance more chance~
ドアのカランコロンというベルの音、コーヒーの匂い。静かなジャズ。相変わらず編み物をしているマスター。スタスタと前を進み、奥の席に座る真木。
3年前と何も変わっていない。
タイムスリップでもしてしまったのであろうか。それぐらい、今の自分すら忘れてしまう。
席に座ると私はさっそくテーブルに立て掛けてあるメニューを手に取った。
「何にしようっかな~♪お腹も空いたしなー。うーん」
私が迷いに迷っている中、真木が当たり前の様にピースした手を挙げ、マスターに向かって言う。
「マスター!ブレンドホット2つ!」
私が「え?」という顔をしていると、松本はニッコリと微笑む。
「真面目な話をする前はまず頭を冴えさせなきゃ!ね?」
「真面目な話?私の人生相談とか?」
「何で?」
「さっきの話の続き」
「松本が今何してるか話?」
「じゃないの?」
「それはコーヒーが来るまでの暇潰し」
「私の人生を暇潰し!?ほぅ!」
「まぁまぁ、とりあえずせっかくの再会だしは、再会っぽく近況報告しようよ」
真木はそう言うとテーブルの上にポンッとタバコを置く。吸い始める。話を聞いてやるモードである。私から話せっていう無言の合図。
何にも変わってないな。真木君は。