僕と君の夢
第一章 死にたくなる気持ち
『あれ?お前なんでいるの?』
僕の眼の前にいるのは、幼少期に親に入れられた児童自立支援施設で一緒だった施設内で1番虐められてた女子・新谷楓だ。
そんな、気が小さくて優しさに溢れているような奴が、どうしてこんな掃き溜めのような精神科に入院しているんだ? そんなことを考えていたら、病棟では食事の時間だったらしく、僕は看護師さんに強い口調で呼ばれ少し怒られてしまった。
『倉坂くん?!食事の時間なんだから呼ばれたらちゃんと来てよね!』
どうして看護師さんは僕に厳しいのかな?って思う人がいるだろうから一応のため言っておくが、僕は再入院だからだ。
前回は家庭内暴力と不登校、非行行為で親に入院させられてしまっていた。
僕は彼女とそんな事を考えながら食事の席についた。
なんと、その席は問題児が周りに4、5人もいる劣悪な環境な席だった。
僕はそんな席から早く抜け出したく、早食いして部屋に駆け込んだ。
ん?誰かが僕を呼んだ気がした。
廊下を覗いてみると、前回の入院の時に仲良かった小学生と、新谷だった。
盗み聞きをするのは良くないと思うが、好奇心は抑えられないものである。
(倉坂くんって何歳?)
コソコソ話しているから良く聞こえないが、新たにはそう言っていた。
(あいつ?18歳だったと思うよwww)
あのクソガキめ!裏では僕のことを呼び捨てではなく、あいつと呼んでいるのか。後で覚えておけよ。
(ふ~ん!あのさ、頼みがあるんだけどいい?)
新谷は小学生に何かを頼み、女子病棟に姿を消した。
僕は病み上がりでもあって疲労が溜まっているみたいだ。少し仮眠でも取るとするか。
『おい!倉坂くん、起きて!』
『あぁ〜ん?何だよ』
僕の仮眠時間を邪魔してでも叩き起こしてきたのは、さっきまで新たにと話していた小学生こと海斗だった。
僕は何の話か聞こうと思ったその時、海斗が僕に対して言った。
『倉坂くんは、新谷さんのことどう思う?』
どうしてそんなこと聞くのか意味がわからない。
だけど、それが新谷が頼んだ事なのだとしたら、余計なことは言わないほうが良さそうだ。
『別に!話したこともないからな。何も思ってねぇよ』
僕は海斗に思っていることを正直に伝えた。そしたら海との顔が満面の笑みに変わった。
多分こいつは新谷のことが好きなのだろう。
まぁいい。俺は早く精神科を退院して自分の夢に向かっていかなくちゃいけない。だから、こんな所で友達ごっこしてる暇はないんだ。
僕はそんな気持ちを抱える生活が3日が過ぎようとした時、あってはならない事が起きてしまった。
ラブコメとかでよくある、男子と女子が二人っきりになるという定番シーンが。なんと、新谷とそんな事が起きてしまったのだ。
これは男から話しかけないと空気が重くて仕方が無い。
『なぁ?新谷は僕のこと覚えているか?』
新谷は僕の顔をジッと見つめ、言った。
『覚えていない。だけど、名前だけは知ってる』
そうだよな。施設でも話したことは無いし、接点なんか全くと言っていいほど無かった。だけど俺は違う。気持ち悪いかもしれないが、新谷は良く死にそうな病んでいる顔をしていたから、勝手に心配して、新谷のことを観察していた。周りから見たらストーカーである。
『新谷、お前今悩みとか辛いことあるだろ?教えてくれないかな』
僕は昔から人の感情を読むことが得意だ。だから、新谷が悩みや辛いことを抱えているのは一目瞭然だ。僕は、やっと新谷と話すことができたんだ、新谷の役に立ちたい。
『わかった。今日の夕飯の後話ししたい』
新谷はそう言って、女子病棟に戻っていった。
夕食後、僕は通称・面会室と呼ばれているスペースで新谷のことを待っていた。僕は、誰かの相談にのる時はノートとペンを常に持つこととしている。
『おまたせ!早速自己紹介といこうか』
新谷は、海斗やは周りの追っかけといる時と違って、僕には優しくて幼馴染の女子みたいな感じで声かけてくれている。
お互い名前は知っいるので、そこら辺は省略した。
まず、悩みや辛いことを聞く前に、いちばん大事なことを聞いておかなくては。
『新谷はどうして入院したの?』
新谷は、目に涙を浮かべながら黙り込んだ。そして、新谷は涙を拭い言った。
『施設の人からタダ働きはさせられるし、学校でも面倒くさいし、部活以外の日はバイト入れられるし、ストレスが溜まっちゃって、薬大量に飲んじゃった』
僕は、知っていた。新谷が入院した理由を。
知っていたのにどうして聞くのか?って思うかもしれないが、今回の話の原点を辿れば、新谷の悩みや辛いことを解消することだ。
だから、入院理由を吐き出すことによって少しでもストレスを減らしてほしかった。僕も新谷に入院理由を言った。少し嘘は混ざっているが。
『僕も施設が嫌になっちゃって薬大量に飲んじゃった』
そうだ。僕は新谷と同じ理由で薬を大量にのみ、入院することになってしまったのだ。
僕には本当の理由があるんだが、今はまだ言えない。
『新谷?今の悩みや辛いことを教えてくれ』
僕は新谷に向けて本題に入った。
新谷は一瞬笑みを浮かべ僕に言った。
『倉坂くん以外の男6人が私にしつこく告白してきたり、スキンシップが
エスカレートしていて嫌なんだ〜』
僕はそれを聞いた時、僕の体の中にマグマのような熱い怒りが生まれてきたのだ。そう。僕は男6人に苛立ちと殺意を覚えた。
『僕に任せろ!男6人には言っておくから』
僕はもとより責任感が強いため、今回の悩みや辛いことはどうしても解決してやりたかった。僕はそう言って彼女の元を立ち去り、男6人を招集した。
僕には限度という言葉が頭の中の辞書にはない。
僕は6人が2度とそんなことをしない様に更生させてやろうとした。
『ギィィィィヤァァァ!!!申し訳...ありません...でした』
男6人は今にも死にそうな断末魔をあげ、僕に頭を深々と下げた。
だが違う。頭を下げるのは僕ではなく新谷だ。
『お前らが頭を下げるのは僕ではない。わかるよな?!』
僕は男6人に軽く圧をかけ、新谷のところへ向かわせた。
『えっ?どうしたの?』
新谷は男6人の凄惨な姿を見て少し驚いていたが、多少なり笑みを浮かべていた。
“本当に申し訳ありませんでした!!”
男6人は深々と新谷に向けて頭を下げた。しかし切れたこれで謝辞を受け入れるかどうかは新谷が決めることだ。
『次やったら、2度と口聞かないから』
男6人にとって、1番の地獄的条件を出されてしまい、男達は喜びを露わにすることはなく、部屋に大人しく戻っていった。
そんな時、新谷は僕に一つの提案をして来た。
そう。男6人を嫉妬させ、反省させよう作戦だ。
まず嫉妬させる為にすることだが、全部で6工程ある。
①ラブレターに装い手紙のやり取りを毎日のようにやる。
②ほっぺツンツンや過度なスキンシップを繰り返す。
③僕が新谷に独占欲を向ける。
④毎日のように一緒にいる。
➄すべての工程が終わった時、公開告白をする。
こんな作戦性格が悪くなければ絶対にやらないことだ。
新谷はああ見えて性格が悪いどころかゲスさまであるじゃないか。
僕はそんな新谷と友達になれたこと心から嬉しく思う。
明日から僕と新谷は作戦に向けて動く!