犬猿☆ラブコンフリクト -三島由紀の場合ー
茂木side



俺が体育館に戻ってから少しして、由紀ちゃん達が戻ってくる。



2人が戻ってきたのを見て、直ぐに茉弘ちゃんに声をかけ、持っていたドリンクのカゴを受け取る。



そのあとすぐ、茉弘ちゃんは二海の所へと駆け寄っていく。



2人の掛け合いは、甘酸っぱいものだった。



部活中は苗字で呼べ・・・か。



別に名前で呼べばいいのに・・・2人が付き合ってること学校中の人が知ってるんだし。



そんなことを考えていると、由紀ちゃんがその2人をみて優しい笑みを浮かべている。



俺、さっきの言葉を聞くまでは由紀ちゃんは二海の事がまだ好きなんだとばかり思ってたんだけど・・・そうじゃないみたいだ。



じゃなきゃ、こんな穏やかな笑顔で2人を見つめられないだろうし。



「仲良いよね、あの2人」



由紀ちゃんの隣に並んであーだこーだ言いながら手当をしている2人を見ながら声をかける。



「そうですね、くだらないことで直ぐに痴話喧嘩始まりますけど・・・微笑ましいです」



「そうだね、ああいうのを見ていると恋人が欲しいと思っちゃうね」



「そうですね・・・」



少し考える素振りを見せる由紀ちゃん。



それを見てちょっと・・・ほんの少しだけ、言ってみたくなった言葉が頭をよぎる。



「俺が彼女にするなら、由紀ちゃんみたいな子がいいな」



「っ・・・!?」



頭で考えついたことを口にすると、目に見えて動揺する由紀ちゃん。



少しだけ、顔も赤くなってきた。



全く・・・可愛い顔しちゃって。



「そ、それ・・・どういう意味ですか・・・?」



何とか言葉を紡いだ由紀ちゃんに対して、笑みを浮かべる。



可愛い反応しちゃってまぁ・・・。



・・・やばい、ちょっとだけって思ったけど・・・もう少しだけ攻めたいな。



「さぁ、どうだろうね。そのままの意味じゃないかな?」



「も、茂木さん、趣味悪いんですねっ!!」



可愛いなと思いながら由紀ちゃんのことを見つめると、視線を逸らしてボトルをいつもの場所に置きに行く。



「そんなことないと思うけど?だって由紀ちゃん、かわいいじゃん」



由紀ちゃんを後に続き、俺も手にしたボトルのカゴを置きに行く。



「茂木さん目悪いんじゃないですか!?眼科行った方良いですよ!!」



そう言って、俺から逃げるように次の練習の準備を始める由紀ちゃん。



あちゃ〜・・・逃げられた。



ちょっとやりすぎちゃったかな。



少しだけのつもりだったんだけど・・・止まらなくなっちゃったんだよね。



だけど──・・・。



素直じゃない由紀ちゃん、めっちゃ可愛い。


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