再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
なんかすごいな。
華道の事は詳しくないが、それは独創的でエネルギーを感じるそんな生花だった。

でもどこか哀愁のような物も感じられてついつい足が止まってしまった。

いけない。
戻らないと。

自分のブースへと戻る途中、黒のキャップを目深に被り黒のオーバーサイズのTシャツにスキニーのパンツを履いて、下を向いて電話を耳に当てスーツケースを引きながら足早に歩く女性とすれ違った。

ドレスアップしてる人々がいる中、彼女のラフな服装は逆に異質で目に止まったのだ。
すれ違った瞬間、聞き覚えのある声がして振り向く。

まさか!

いや、違うよな。
ドレス着てないし。

俺はまた何事もなかったかのように歩き出した。

あの彼女は一体どこの誰なんだろう。
なぜこんなに胸がざわつくのだろうか。

彼女の佇まいはもちろん、一瞬にして人を引き寄せるオーラにすっかり頭の中はいっぱいになってしまった。

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