再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「いや…その…。ご、ごめんなさい!」

そう言って立ち上がると、ベビーカーを押して出て行こうとする。

天音と慌てて後ろを追いかける。

すると一台のワゴン車が止まったと思ったら運転席から男が降りてきて、女を抱きしめた。

は?
俺たちは一体、何を見せられてんだ?

そして一言二言何か話すと、男はこちらに向かってペコっとお辞儀をすると女を乗せて行ってしまった。


「ど、どゆことあれ…行っちゃったんだけど」

天音も訳がわからないようだ。

「ああ。俺もさっぱり意味がわからん」

「丈慈」

低い声で呼ばれる。
完全に怒ってるわこれ。
そして完全に俺が悪い。

「はい」

俺は小さく返事をする。

「心配した」

「ごめん」

「不安になった」

「ごめん」

「嫌だった! 昔の女の人見るのなんて!」

そう言って天音はポロポロと泣き出した。
なんでこうも違うのだろうか。
なんでこうも愛しい女の涙は拭いてやりたくなるのだろうか。

俺は天音をキツく抱きしめる。

「天音。本当ごめんな。嫌だったよな」

頭をゆっくりと優しく撫でる。
ここが外だろうが関係なしに。

こんなに過去の行いを後悔した事はない。

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