再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
帰国するなり、今度はホテルでイベントだ。

今日はマスコミ関係も来るらしい。
深いため息を吐いた。
どうせ二十五歳までしかしないのに。

しかも私は知っている。
世間で何と言われているのか。
SNSなんかは特に酷い。

もちろん褒めてくれる人も多いけど、だいたいは根も歯もない噂や妬みだ。

兄の翔太郎と二人で歩けば愛人扱いされ、お淑やかにしなければならない為澄ましていれば、気取ってるだの性格キツそうだの言いたい放題だ。
プライベートはどうせ尻軽だとかね。
何も知らないくせに。

信じたい奴は信じればいい。
言いたい奴は言えばいい。
どうせ華道の時の私は所詮作り上げられた物だ。
なんならロボットだ。
痛くも痒くもない。

翔太郎はあの通り大らかな性格で、私が愛人だと噂された所で何のダメージもないらしい。
奥さんの皐月(さつき)ちゃんも、

「兄妹そっくりなのによく愛人だと思うわよねー! どこに目つけてんのかしら。天音ちゃん気にしちゃダメよー」

なんて言って笑ってる始末だ。

人前で大口を開けて笑う事など許されない。
私は家のルールに従ってるだけなのに。

堅苦しい着物に袖を通し、前髪を上げる。
そこに薄めのメイクを施せば華道家としての辻本天音の出来上がりだ。
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