再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
あのままお婆様のもとで実家にいたら、常に気を張って息が詰まっておかしくなっていたかもしれない。

それもあと一年か…。

華道は嫌い。
結婚して嫁に出たら潔く引退できる。
ただ、相手の男性はお婆様が決める。

それが華道から離れるたった一つの方法だ。

一度くらい素敵な恋に落ちてみたいものよね。

私はこれまで誰ともそういう仲になった事がない。

私の家柄などを知れば安易に近づいてくる猛者はいないし。
華道をしている時は自分を押し殺し、お淑やかにしているためそれだけで皆んな尻込みをしてしまうらしい。

プライベートも然り。
高嶺の花なんて言われて、みんな外見を褒めるばかり。
誰も私の中身なんて興味ないようだった。

そんな人を相手に恋愛に発展する事などもちろんなく、気づけばこんな歳になるまでなんの経験もないまま月日だけが経ってしまった。
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