再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
でもな…

どうせ一年後にはお婆様の決めた相手と結婚しなければならないし、今更彼氏なんて作ったところで一緒になれる未来は私にはない。

はぁーと深くため息を吐く事しかできない。

それでも私は華道の世界から抜け出したい。

そんな事を思う私はどこかおかしいのだろうか。

何か特別な理由があって嫌いになったわけでもない。
ただただ、息が詰まるのだ。

堅苦しい着物に身を包み、慎ましく穏やかにお淑やかに。

お婆様の機嫌を伺い、周りには好き勝手に評価されて。

心を無にしてひたすらルールに従い花を生ける。

花も私なんかに生けられて可哀想だと思う。

何が素晴らしいのかわからない。
何で褒められるのかも。

自分自身の評価と周りの評価のギャップが、私を更にチグハグにさせるのだ。

外側の私だけが一人歩きしているようなそんな感覚に陥る。

本来の私は言葉使いも表情も、見た目もなにもかも違うのに。

私は上手に化ける事ができない。
とことん不器用なんだと思う。

自分でもどっちが自分だかわからなくなる。


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