再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「うん。ありがとう」

「ああ」

審査員達も次々に会場入りしているのが見えた。

柊源?

何やら審査員達と話し込んでいる。
まさか本当にお金で…?

そんな…

絶望感が私を襲う。

ダメダメ。
余計なことは考えるな。
集中、集中。

そしていよいよ本日のお題が発表される。

"愛"

それはなかなか珍しいお題だった。

二名ずつで私と柊源の順番は最後だ。
そして最後まで他者の作品を見ることは出来ない。

緊張が走る。
いよいよ順番が迫ってくる。

「やぁ私の未来の奥さん。せいぜい頑張ってくださいね」

柊源はまた余裕そうに挑発を続ける。

「皆さん、柊源さんの作品を目の前で見られるのを楽しみに待っていますよ」

なんと言われようがどうでもいい。
私は自分の出来ることをやるだけ。

自分を信じるしかない。
幼い頃から厳しくお婆様に叩き込まれた華道。
それも今ならわかる。
全て愛だったのだと。

それから両親の愛。
一緒にいられた年月は短いが沢山愛してくれた。

そして何より、愛され愛することを教えてくれた丈慈や丈慈の家族、親戚たち。
私が私でいられる場所。

大丈夫。
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