再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
すっかり自分の世界に入っていた。
そして愛おしい人を思いながら生ける事がこんなに楽しいだなんて知らなかった。

お婆様や私の家族、友人、そして丈慈。
いろんな人からの愛に感謝を込めて、ひたすら夢中になって生けた。

そして終了の合図がなり、私の番が終わった。

チラッと隣の柊源の作品を見て驚く。

それは誰が見ても明らかだった。

これを世に?
この人は一体…

お題にも添っていないような、なんともいえない見よう見まねで生けたそれは酷い作品だった。

よく見れば、手が震えている。

会場からはザワザワと声が聞こえてくる。

これは公開処刑もいいところだ。

「なんで、なんで…」

その目は先代へと向けられている。
まさか意識が戻らなかった先代が審査員としてここに来ているとは思わなかったのだろう。
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