再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「天音、帰ろう」
優しく私を見下ろす丈慈にコクっと頷けば、翔太郎も私を見て頷いた。
そしてエスコートされながら振り向き柊源を見れば、肩を落としガクッと膝を床について崩れ落ちるように座り込むのが見えた。
「丈慈…」
丈慈は何も言わず前を向き歩き続ける。
すると角を曲って誰もいない所にでるとキツく抱きしめられた。
「天音…会いたかった」
丈慈は聞いたこともないような辛そうな声を出す。
「丈慈…ごめんなさい…。ごめんなさい」
私もすっかり緊張の糸が解けてしまったのかポロポロと涙が次から次へと出てきてしまう。
「天音…もう一人で頑張らないでくれ。そんなに俺は頼りないか?」
今度は悔しそうな声で言う。
違う。違うの…
そんなつもりじゃ…
ちゃんと話したいのに涙が止まらなくて話せない。
「悪い、責めるみたいな言い方して」
丈慈は私を覗き込むように見つめると無理やり笑顔を作り指で涙をすくう。
丈慈の瞳がグラっと揺れている。
こんな顔をさせたかった訳じゃないのに。
「帰ろう、天音」
そう言って今度は手を繋ぎ歩き出した。