再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
そうなのだ。
あの時の私は、辻本の流派を割と気にせず好きにやった。
見る人が見れば直ぐにわかっただろう。
「やっぱり…わかった?」
「ええ。でも、たまにはいいんじゃないかしら? ルールに従わず好き放題やっても。また好きに生けたくなったらいつでも帰ってきなさい」
「ありがとう…お婆様」
そう言うとお婆様は優しく微笑んで頷いた。
「さ、ほらそんな顔してたら丈慈さんが心配しちゃうわよ!」
お婆様は私のベールをそっと下ろした。
「幸せにね」
「うん。よろしくねお婆様」
そしてチャペルの入り口までお婆様と移動した。
「お婆様。これまでありがとう」
お辞儀をしながら私はお婆様に感謝を伝えた。
「天音…」
お婆様の声は心なしが震えていた。
私も泣かないようにとグッと歯を食いしばった。
そして音楽と共に扉が開いて顔を上げた。