再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
びしょ濡れになった私達は二人でスイートルームから見える雨上がりのキラキラと光を放つ景色を手を繋いで並んで見る。

さっきまでの大雨が嘘みたいだ。
虹が私たちを祝福してくれているかのよう。

ただ黙ってしばらく眺めていれば、丈慈が私の後ろに回って抱きしめてきた。

「天音…ありがとな」

「なにが?」

なんのお礼?

「俺と結婚してくれて」

そんな…

「丈慈。それは私の方だよ。丈慈に出会ってから私の世界は変わった。見るもの全て明るくなったみたいに。コンクールの時も…家で籠って練習している時も。離れていても、ずっと丈慈が心の中にいて私を励ましてくれた。何も言わずに出て行った私を、待っててくれた」

「天音…」

「丈慈はいつもそう。初めて会った日も。その後も…探してくれてたんでしょ?」

「ああ」

「初めて過ごした夜だって…私…。離れた私を丈慈はまた捕まえにきてくれた」

丈慈は何も言わずに更に抱きしめる腕に力を込めた。

「本当に、本当にありがとう。丈慈」



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