再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「そうか。お礼言っとく」

お礼か…

一年程前にパリで通訳をしてくれた彼女を思い出す。

事あるごとに思い出してしまうが、結局名前も知らないし探せなくて、偶然街で会う事もなく気づけばもう一年が経とうとしていた。

「丈慈お前、まだ気にしてんの?」

「ああ。ちゃんとお礼してないしな。あの時助けてもらったおかげで、パリの仕事もらえたんだ。あの子やっぱり向こうの人だったのかな」

「さぁな。お前惚れてんじゃねぇのそれ」

なんて言われた。
大河はそう言ってまたパソコンに向かい手を動かし始めた。

「そんなんじゃねぇよ」

惚れてる?
俺が?
動揺を隠すように俺はデスクの上に上がっているいつのだか知らない一冊の冊子を手に取る。

パラパラと興味もなくめくり、とあるページで手が止まる。

"華道家の超絶美女! 愛人か⁈"

そこには着物を着た美男美女の写真。

美人なのに愛人なんて勿体ねぇ。
そもそもそういう道理に反した行動をする女は嫌いだ。
まぁこんな記事、ほとんどが嘘だろうがな。

この二人、どう見ても顔が似てる。
兄妹か親戚だろ絶対。

それにしてもこの女性、どこかで見た事あったか?

いや、こんな着物を着るお淑やかな美人は知り合いじゃないな。

俺の周りの女性陣は男より元気な奴らばっかりだ。
俺の妹もだけど、大河の妹の美空(みく)なんて凄いもんだ。

心臓の動きも治った。
またパタンと閉じて俺もようやくパソコンに向かう。
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