再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
パリの彼女を見ればまだ俺をジッと見ていた。
俺の事、覚えてないか…
「大丈夫ですか? 連れの方は?」
俺もとりあえず話しかける。
すると彼女は首を左右に振る。
連れはいない?
「あ、はい。助かりました。ありがとうございます。しつこくて困ってたので。連れなんていませんよ」
彼女はそう言って少しおどけたように話した。
やっぱり彼女だ。
声が同じだ。忘れもしない。
何度も思い出した。
この一年。
お礼をしたくて。
お礼を…
やっと会えた。
連れもどうやらいないようだ。
それだけでさっき一瞬感じた絶望的な感覚が薄れていく。
「困ってた感じがしたから。名前を伺っても?」
「辻本です」
彼女は上の名前だけ名乗った。
なるほど。警戒されてるな。
「辻本さん。下は?」
「あ…天音です」
あまね。
「漢字はどう書くの?」
何でこんなに次から次へと質問攻めみたいに。
「天に音であまねです」
「良い名前だね。俺は丈慈。神楽丈慈」
「神楽丈慈…さん。あの!」