再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「もしもし」

『天音。大成功だったようね。さっそく報告の連絡があったわ』

良かった。
ダメ出しじゃなかった。

「ありがとうございます」

『それでなんだけど、そっちでゆっくりしたい所でしょうけど今すぐ帰国しなさい。仕事が入ったわ』

まぢかー。
めっちゃ嫌だ。
とは言えない。
相変わらずお婆様は人使いが荒い。

「かしこまりました。お婆様」

『それじゃ』

ブツっと切られる。
この切り方もどうにかなんないの?
ついつい切られた電話を睨む。
仕方ない。帰るか。

ついさっき来たばかりだというのに早々に部屋に戻った。

華道の場面や、お婆様の前での私はそれはそれは自分を抑えて細心の注意をはらってお淑やかにしている。

見た目もプライベートと完全に分けていて、普段の姿から想像できないくらいだろう。
プライベートでは一切家業の事はひた隠しにしている。

これも家が華道の家元だからだ。
いちいち騒がれるのも嫌だし。
あんなのは私じゃない。

まぁ、それも私が二十五歳になるまでだけど。
嫁に出たら華道からは開放される。
私の人生と引き換えに。
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