再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
〜天音side〜

丈慈に抱いてもらったあの日、名刺を持ち帰ったものの一目も見ずに引き出しの奥へしまった。

私の気持ちと共に。

私は華道を捨てるために、お婆様が決めた好きでもない相手と結婚する。

私は、純粋にお礼がしたいという丈慈を利用しただけの酷い女だ。

何度も好きと言ってくれたのに…
私にはそれに答えることができない。

連絡しろと言われたのに一夜限りと思ってあの夜を過ごした私は結果、丈慈を裏切った。

あんなに素敵な人を…。

ギュッと目を閉じる。

泣くな。

これは自分が招いた結果なんだから。

今頃丈慈はこんな身勝手な私の事なんて嫌いになっただろう。

ズクンと胸が切り裂かれたように痛みが走った。

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