再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「天音…。いいの? それで」

春香がいつになく真剣な表情を見せる。

「い、いいの。華道から離れるためだもの」

「そう。ま、天音がいいなら! それにしてもあの彼、本当にイケメンだったねー!」

なんて明るく言って春香はそれ以上言及する事はなかった。

「本当に! あんなイケメンいるんだね! 良い思い出できたよ本当に!」

そう。
いいのこれで。

彼との思い出を胸に私はお婆様の決めた相手と結婚する。

まるで自分に言い聞かせるように何度も繰り返し唱えた。

私は初めて春香に嘘をついた。

私は丈慈が好き。

言えないよ。こんな事。
好きと一度でも口にしてしまえば間違いなく後戻りできない。

すぐにでも名刺を引き出しからだして、彼に連絡をして連れ去ってほしいと言ってしまうだろう。

数ヶ月もすれば運命の二十五歳だ。
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