再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
顔合わせ
〜天音side〜

「天音。こちらへ」

お婆様に呼ばれておずおずと近づく。
ついに来たか…。

ついに私は十二月に入り二十五歳を迎えた。

「はい。お婆様」

「わかってると思うけど、嫁に行きなさい」

「…はい」

「お相手は…」

「お婆様。相手が誰であろうと結婚致します。これまでありがとうございました」

聞きたくない。
私はいつも通りニコリともせず答えた。

相手が誰であろうと、丈慈じゃないなら誰でも変わらない。

「そうですか。では、顔合わせの日時はまた後日」

「はい」

丈慈…。

あの夜、何度も好きだと言ってくれた彼を毎晩のように思い出す。
私も答えたかった。

私も丈慈が好きだと。

あんな一瞬しか話した事もないのに。
一度きりの夜を過ごしただけなのに。

さようなら。
私の愛しい人。

この胸にずっと。
あなただけを想って生きていくから。


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