再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する


「私が選んだんじゃ意味ないじゃない。そりゃ変な方はごめんよ? 丈慈さん、パリで天音に会ってるわよね?」

え?

「はい。言葉が通じなくて困っていた所を天音さんが助けてくださいました」

「そうだったの…。天音は何も言ってなかったけど帰国してから珍しく機嫌がよくてね。生花も変わった。あなたに会ったからでしょうね。あとから現地のスタッフに聞いたら、あなた達の事を見ていた人がいたわ」

見られてたのか。

「それから…少し前にも会ってるわよね?」

少し強めの眼差しで見られた。
バレてんなこれ。

「はい」

正直に言う。

「やっぱり。あれからだもの。天音の生ける花がまた変わったのも」

「また変わった?」

「ええ。とても迷いのある生花よ。葛藤、寂しさ、愛おしさ。そして助けを求める悲痛な叫び。天音は気づいてないけど、全部出てるわ」

俺はただ黙って聞くことしかできない。

「わかる人にはわかるのよ。天音の想い人はあなたでしょ? 丈慈さん。私が決めた相手と結婚すると言ってるけど、私は天音が決めた人がいるならその人と一緒になってほしい」

それって…
けしてこの結婚は、菊枝さんの強要ではないって事だよな。

「だから私は待ってたのよ。丈慈さんあなたを。あなたが来なかったら私から行くつもりだったわ」

そう言って菊枝さんは目を細め微笑んだ。
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