再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する



丈慈は右手でずっと手を繋いでくれている。
あの初めての日みたいに、逃がさないと言ってるみたいに。

「天音、悪い。やっぱり帰したくない」

ハンドルを握り真っ直ぐ前を向く丈慈。
私もだった。
帰りたくない。
今は離れていたくない。
そう思っていた。

「このまま連れ去ってよ」

そう言うとちょうど信号で止まる。
丈慈と目が合ったかと思えば首の後ろに手が周り引き寄せられキスをされる。

ドクンドクンと心臓が速い。

「俺んち行こう」

私はコクっと頷いた。

静かな車内に私の心臓の音が響いているかのようだ。
一度抱かれた事のある私はこれから何をするのか想像してしまって、もう胸が爆発しそうだ。

そして車はまた動き出す。

今からこんなんで、大丈夫なんだろうか?

「緊張してる?」

「し、してる」

だってあの時が初めてだって、丈慈はきっと気づいてる。
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