再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
「俺も」

「丈慈も?」

「ああ。あの夜だってずっとドキドキしてた」

そうだったの?
全然わからなかった。

私の手をそのまま自分の胸に引き寄せた丈慈。

トクトクと速い鼓動が伝わってきた。

「本当だ! 私と一緒だ! ほら」

私も丈慈の手を引き寄せた。

するとそのまま事もあろうかガシッと胸を鷲掴みされる。

「ちょっと!」

「ははは! わり。我慢できなかった」

「もう!」

「着物だと硬えな」

は?
この期に及んでまだ言うか?
丈慈は掴んだその手で空を握っている。

「し、知らないわよ! やめてよ手動かすの!」

「はははは! 怒ってる怒ってる」

「もう!」

「緊張、解れたろ?」


そういう事か。
ガチガチに緊張した私をリラックスさせるためにふざけてみせたんだ。
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