再会した御曹司は純情な彼女を溺愛する
そして唇が離され、何も言わずに私の手を引いて曲線を描く幅の広い大きな階段をゆっくりと登っていく。

私が着物だから合わせてくれてるんだ。
丈慈のそういう細やかな気遣いが私の胸を余計に熱くさせる。

ひとつの大きな扉の前までくると丈慈は私を中に入れた。

そこには真ん中にキングサイズのベッドが綺麗にベッドメイクされて佇んでいた。

シックな色の壁紙に合わせて、シーツはダークグレーで統一してあってオシャレで大人っぽい落ち着いた寝室だった。

ベッドの他には窓側に一つ、一人がけのデザイナーズソファが角に斜めを向くように置いてある。
ベッドのすぐ横には、サイドテーブルがあってオシャレなランプがあった。

「初めて入れた」

「え?」

「天音が初めてだよ。ここの家に入れたのも、この部屋に入れたのも。初恋だって言ったろ?」

言ってた。

そう言って私を見つめる瞳には、あの日見せたあの情欲の炎が燃えているのが見えた。
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