ホスト様の隣は私
「來斗、ちょっと」

オーナーが深刻そうな顔で俺を呼ぶ。

美桜のことだろう。


「何かあったんですか?」

「あぁ。アイツから美桜ちゃんに連絡があった」


………は?

アイツが美桜に?


「何を話したのかは知らないが、それからずっとあんな調子だ。

俺が傍にいておきながら、すまん」


いや、オーナーは悪くない。

だけど、明らかに様子がおかしい。

何か言われたに違いない。


「いえ、オーナーが気にすることではないです」

オーナーにそう言ったあと、美桜のところへ行く。


だけど、何度呼んでも微動だにしない。

どうしたらいいんだよ。


「美桜、旅館に戻ろう」

そう言った俺を見たかと思えば、無表情のままオーナーに頭を下げて俺の隣に来た。


話したくはないが、俺と一緒にいてくれるのはわかった。

それだけでも少しだけ安心する。
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