私の恋がはじまった日
1、大事な思い出
「あれ?この缶、なんだっけ…?」
部屋を片付けていると、くまの絵柄のクッキーの缶を見つけた。
明日から中学二年生になる私、佐藤 美音は現在部屋のお片付け中。
明日にはまた教科書やノートが山ほど増える。
だから今日中に一年生の教科書を片付けておかないと、勉強するスペースがなくなっちゃう。
二年生になったら、また勉強が難しくなっちゃうのかな、なんて少し不安に思いながらも、私は教科書やノートを勉強机から本棚に移していた。
ついでに散らばっていた小物なんかも片付けてしまおうと、クローゼットを開けて、そこで隅に置かれているクッキーの缶に気がついたんだ。
クッキーの缶を開けると、中にはたくさんの小さなお手紙が入っていた。
「あ、これ!」
小学生の時にクラスのお友達と交換してたお手紙だ!なつかしいなぁ~。
小さくたたまれたお手紙を広げると、カラフルなペンで書かれた文章が目に入る。
当時はいろんな子とお手紙の交換をしていて、それがすごく楽しくて、大事にしまっていたんだ。
「なつかしいなぁ」
私はそのひとつひとつを手に取り、ながめていく。
中学生になって連絡を取っていない子もいて、元気かななんて思いをはせた。
「ん?」
小さなお手紙の山の中になにか固いものがあって、それがかつんと指先に触れた。
なんだろう…?
私はそれを缶から取り出した。
「しろくまのキーホルダー…?」
それは少し汚れた、しろくまのマスコットキーホルダーだった。
触れた途端、思い出がぶわっとよみがえる。
「そうだ、これって…」
そのしろくまのキーホルダーは私にとって、大切なものだった。
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