私の恋がはじまった日

「その時にいっしょに探してくれた男の子のことなんだけど…」


 それ以来一度も会えていなくて、今どこにいるのかもわからない眼鏡をかけた男の子。


「その話、何度も聞いたな…。あの時の美音、すげー落ち込んでてさ。全然会えないって言ってたっけ…」


「うん…」


 また会いたいな、って思ってたことも、キーホルダーを探してくれたことも、日が経つにつれ忘れてしまっていた。


「どうしてまたその話?」


「あ、ううん!昨日部屋を片付けてたらその時のしろくまのキーホルダーが出てきたから」


 この話をすると、なんでか椿はあまりいい顔をしない。


 私が一人で探してたこと、まだちょっと怒っているのかな?


「何度も言うけど、そういう困ったことがあったら、まずこの幼なじみの俺を頼ること!いいな?」


「うん、ありがと!」


 「よろしい」、と言ってにっと椿が笑うので、私もつられて笑顔になる。


「あ、そういえば、今日転入生がくるって」


「え、そうなの?」


 椿からのビッグニュースに驚いていたら、曲がり角から出てきた人にぶつかってしまった。


「わっ…」


「美音っ!」


 私が転ぶ前に、そのぶつかった人が私の身体を支えてくれた。


 驚いて目をつむってしまった私は、あわてて目を開ける。


 すると目の前に、男の子の顔があった。


 切れ長の瞳に、高い鼻。すごく整った顔立ちだ。


 鋭い藤色の瞳が、私を捕らえていた。

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