私の恋がはじまった日

「あ、ご、ごめんなさい!」 


 私が謝ると、私の腰を抱いていた彼は、ぱっと手を離した。


「怪我、ないですか?」


「それはこっちのセリフ」


「私は大丈夫です!」


 彼は私たちと同じ制服を着ていた。同じ学校の人だ。


 同じ学年にこんな人いたかな?新入生か、先輩かも。


 私がそんなことを思っていると、目の前の彼は、私をまじまじと見ていた。


「あ、あの、なにか…?」


「お前……」


「え?」


「いや、…なんでもない」


「???」


 彼は私の顔をじっと見たかと思うと、踵を返して行ってしまった。


「な、なんだろう…??」


 なにか言いたそうに見えた。もしかして本当はどこか怪我してたとか?


「美音!平気か?」


 椿があわてたように声をかけてきた。


「あ、全然大丈夫!ぶつかっちゃったけど、転ぶことはなかったし」


「よかった…」


 ほっと胸をなでおろす椿に、なんだか笑ってしまった。


「椿、最近ちょっと過保護すぎない?」


「だって美音、そそっかしいつーか、危なっかしいんだよ」


「もうっ!私だってもう中学二年生だよ?心配いらないのに」


「今人にぶつかっておいてどの口がそんなこと言うんだよー」


「あはは…ごめんごめん」


「まったく、美音は俺が傍にいてやらないと!」


 誕生日だって数か月しか違わないはずなのに、最近の椿は私に対してとっても過保護だった。


 一人で出かけたりするのも心配するし、なにかと交友関係も気にしてくる。


 なんだかお母さんみたいな幼なじみだ。

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