私の恋がはじまった日
7、ドキドキさせないで
「さてと、これを運んだら終わりっと」
私は教卓の上に積まれたノートの山を確認した。
今日、私は日直だった。
もう一人の日直のペアの子が風邪でお休みだったので、私一人の日直。
日直と言っても、黒板を掃除したり、その日の日誌を書いたり、号令係を担当するくらいで、一人でも十分やりとげられた。
でも最後に、このノートの山を先生のところに持って行かなくてはいけない。
6限終わりに集めた社会のノートで、日直が運ぶことになっていた。
でもこれが終われば日直の仕事は終わりだ。
「よし!もうひとふんばり!」
私はノートの山を抱えて教室を出た。
廊下に出ると、吹奏楽部の合奏が聞こえた。
いつもは部活に行くため、すぐに校庭に出てしまうので、吹奏楽部の練習を聞くのは新鮮だった。
あ、この曲知ってる!たしかドラマの主題歌だった…。
吹奏楽部の合奏に耳をかたむけて歩いていると、なにかが足に引っかかって、私は前のめりになってしまった。
「わっ!」
絶妙なバランスで積まれていたノートたちが、私の腕からバタバタと音を立てて落ちていく。
どうやら廊下に置きっぱなしにされていたほうきに、足をとられちゃったみたい。
「やっちゃった!早く拾わなきゃ!」
私はあわてて屈んで、ノートを山に戻していく。
そこにだれかがやってきて、同じように屈んでノートを拾い集めてくれた。
「あ、ありがとうございます…!」
私が顔を上げてお礼を言うと、そこには呆れたような顔をした藤宮くんがいた。