私の恋がはじまった日

「え、えっと…?」


 なにを言われているのかわからなかった私は、困ったように男の子を見た。


 すると彼はうんざりしたようなため息をつく。


「どうせもう見つからないだろ。あきらめろよ」


「え…?」


「ここんとこずっとなにか探してるだろ。どうしてあきらめないんだ?」


 私がキーホルダーを探しているのを見かけていたのかもしれない。男の子はそう言ってきた。


「だ、大事なものなの!だからどうしても見つけたくて…」


「あっそ」


 私の返事を聞くと、男の子はさっさと言ってしまった。


 なんだったんだろう…?


 不思議に思いながらも、私はキーホルダーを探し続けた。


 すると次の日、また昨日の男の子がやってきた。


「まだ探してるのか」


「う、うん…」


 なにか文句を言われるのではないかと身構えていると、彼は自分のランドセルをその辺に放り出して、茂みに手をつっこみはじめた。


「えっと…なにしてるの?」


「なにって、お前のなくしものを探してるんだろ」


「え?手伝ってくれるの?」


「俺、ここ通学路なんだよ。毎日毎日、お前が目につくって言うか、鬱陶しいから、さっさと見つけるぞ」


 あまりに口が悪くて、一瞬なにを言われているのかわからなかった。


 けれどどうやら彼は、キーホルダー探しを手伝ってくれるみたいだった。


 私はそれがうれしくて「ありがとう!」とお礼を言った。


 男の子はそれになぜか目を丸くしていたけれど、そっぽを向くと、さっさと探しはじめる。


「で、なにをなくしたんだ?」


「あ、しろくまのマスコットキーホルダーで、このくらいの大きさの…」


 私たちはその日から、二人でキーホルダーを探しはじめた。


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