私の恋がはじまった日

 今日は数学のワークの宿題が6ページ出ていた。


 自分で解いて、別冊でついている解答で答え合わせをして終わり。


「美音、数学苦手だろ?教えてやろうか?」


「うーん…大丈夫!まず自分で解いてみる!」


 私はずらっと並んだ数字に負けないよう、気合を入れて解きはじめる。



「できたっ!」


 私がペンを置くと、まだ解き途中らしい椿は、驚いたように顔を上げた。


「え、美音もう終わったの?」


「うんっ!」


「早くね?美音が俺より早く解き終わるなんて」


「えへへ~」


 椿の方が数学は得意なので、いつもは私が教わる側。でも今日は違うよ。


「椿くん、わからないところはあるかね?この美音先生が教えてあげようかな?」


 私が自慢げに言うと、椿は少しむっとしたように「自分で解けるしっ」とまた数学のワークに向き直った。


 間違えたところは二か所だけ。


 数学が苦手な私にしては、だいぶ解けたほうだと思う!


 数学のワークを見てにんまりする私に、椿は不思議そうに尋ねてきた。


「美音、急にどうしたんだよ?あんなに数学苦手だったのに」


「えっへん!」


「美音はほんと偉いよな。部活も勉強もがんばってて。すげー尊敬する!俺も美音の隣にいて恥ずかしくないようにしなくちゃな」


 う、そんなに褒められるとは思っていなくて、なんだか逆に申し訳なくなってきた…。


「実はね…」


 私は椿にネタ晴らしをする。

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