私の恋がはじまった日

 「もう少し俺を意識すればいい」、そう言ってからかうような笑みを浮かべた藤宮くんを思い出して、私はまた頬に熱がこもるのを感じた。


「美音?顔真っ赤だけど…」


 椿に指摘されて、私はあわてて頬をおさえる。


「ええ!?そ、そうかな…」


 あんなことされたら、だれだってドキドキしちゃうよ…!


「やっぱり藤宮になんかされたのか?」


「え!?あ、いや!?なにもっ!?」


 藤宮くんにでこちゅーされました、なんて言えないよ…!


 幼なじみであっても、さすがにまだ打ち明ける勇気はなかった。


 変な態度の私を、椿はじーっと見つめてくる。


「さっきのあれは、俺の見間違いだったのかな…。まぁ…、ならいいけど…」


 納得していなさそうな声で、椿は引き下がってくれた。


 私はほっと胸をなでおろす。


 幼なじみの椿とは、隠しごとなし、って感じで、今までだったらなんでも打ち明けていた。


 でも今回のは、まだうまく話せる自信がないよ…。


 せわしなく動く心臓を落ち着かせていると、不意に椿が私の左手を取った。


 その手を自分の口元へと持っていくと、薬指のあたりにちゅっとキスをした。


「美音は俺とずっと一緒にいるんだからな?忘れんなよ?」


「な、ななななな……!!」


 にっと笑ってウインクをする椿に、私はぽかんと口を開けるしかなかった。

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