私の恋がはじまった日
9、先輩との穏やかな時間
「危ないっ!」
「へ?」
サッカー部の部活中。
ぼーっとしていた私に、ボールが飛んできた。
あ、だめだ、ボールがあたるっ…!!
私はとっさに避けることもできずに、ぎゅっと目をつむった。
しかしいつまで経っても痛みはやってこない。
おそるおそる目を開けると、菅原先輩が胸でボールを受け止め、キャッチしていた。
「佐藤さん!大丈夫!?」
心配そうに私の顔をのぞきこむ菅原先輩に、私はほっとした。
「あ、ありがとうございます…!大丈夫ですっ」
「佐藤!すまん!」と蹴った張本人の部員もこちらにかけ寄ってくる。
「大丈夫!あたらなかったから。それに、私がぼーっとしていたせいなので!」
部活中にぼーっとするなんて、不注意だった。
こうやってボールが飛んでくることもあるし、なにより部員たちの動きをしっかり見てあげなきゃいけないのに。
こんなのマネージャーとして失格だよ…。
「…佐藤さん、ここのところぼーっとしてることが多いよね?体調悪い?」
菅原先輩が心配そうな表情で私を見ている。
先輩に心配かけるなんて、なにやってるんだろう私。
「体調はとっても元気です!ご心配をおかけしてすみません!集中します!」
私のとっても元気です!アピールに、なぜだか先輩はまた困ったような顔になってしまった。