私の恋がはじまった日

 「はぁ……」


 部活終わり。


 ボールや備品の片付けをしながら、ため息がこぼれてしまった。


 部活中にぼーっとしちゃうなんて…。みんなにはぼーっとしてると怪我のもとだよ!なんて言ってたけど、どの口が言ってたの…。


 反省しながら片付けを進めていると、「佐藤さん」と後ろから声をかけられた。


「菅原先輩」


「お疲れさま」


「お、お疲れさまですっ!さっきは、すみませんでした…」


 私がもう一度謝ると、菅原先輩はまた困ったように笑う。


「佐藤さんに怪我がないならいいんだよ」


「ありがとうございます…」


「ところで佐藤さんって、ねこ好き?」


「へっ?」


 急に話題が変わって、私はきょとんと先輩の顔を見つめてしまう。


「ねこ、ですか…?好きです」


 わんちゃんもかわいいけれど、ぜったいどちらかを選べ、と言われたらねこちゃん派だ。


「明日は練習が午前中で終わりだし、よかったら午後は僕に時間をくれないかな?」


「はい、大丈夫です…?」


 明日は部活以外予定がなかったので、午後はもちろん暇だった。


「じゃあ明日、よろしくね」


「はい…?」


 菅原先輩からなんの詳細も教えられないまま、私は不思議に思いながらもうなずいた。


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