私の恋がはじまった日

「痛っ」


 キーホルダー探し中、私が葉っぱで足を切ってしまったことがあった。


 男の子は呆れながら、私を水道のあるところまで連れて行ってくれた。


 ハンカチをぬらして傷まわりの汚れを拭き取ると、そこに絆創膏を貼ってくれた。


 その手際の良さに、私は感動した。


「すごい!お母さんみたい!」


 私の言葉に、彼は照れくさそうに視線をはずした。


「だれがお母さんだ。これくらいだれだってできるだろ」


 数日いっしょに探していく中で、わかったことがあった。


 この子は素直ではないだけで、優しい子なんだろうな、ってこと。


 言葉は少し乱暴だけれど、なんだかんだ私を気遣ってくれている。


「ありがとう!」


 私たちはまたキーホルダーを探し続けた。


 その間男の子といろんなお話をしたと思う。


 学校ではなかなかお友達ができなくて、うまくおしゃべりできなかった私だけれど、不思議と彼とだとするすると言葉が出てきて、たくさんおしゃべりをした。


 通っている学校は違ったけれど、放課後は毎日いっしょにキーホルダーを探したんだ。


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