私の恋がはじまった日

 いつもみたいにほっぺたいっぱいにパスタを頬張ってしまって、私ははっとした。


「す、すみません!お行儀悪かったですよね?」


 顔を上げると、菅原先輩もお姉さんも同じような笑顔を浮かべてわたしを見ていた。


「ぜんぜんそんなことないわ!おいしそうに食べてくれて私もうれしいな」


「佐藤さんの食べてる姿かわいいな、っていつも思ってたよ。部活のときも大きいお弁当持ってきてたよね」


「お、お恥ずかしいです…」


 まさか菅原先輩にもりもりお弁当を食べているところを見られていたなんて…!


「祐輔にね、だれかお友達でねこカフェに興味ある子いない?って聞いたら、あ、呼びたい子がいる、って言うもんだから、どんな子なのかなーと思っての。まさか女の子だったなんてねえ。祐輔も隅に置けないんだから」


 先輩のお姉さんが菅原先輩を見てにこにこと笑う。


「もういいから、姉さんは自分の仕事に戻って」


「はいはい」


 菅原先輩が照れている…!なんて貴重な場面…!


 サッカー部の部長であり、三年生の先輩である菅原先輩は、私にとって尊敬する先輩だった。


 でも先輩もこうやって弟の顔をしたり、照れたりするんだなぁと思うと、なんだか微笑ましくなってしまう。


 先輩のかわいい場面に遭遇しちゃった!


 私が笑っていると、菅原先輩は少し困ったように眉を下げた。


「恥ずかしいから、今のは忘れてね」


「はいっ」


 と言いつつ、きっと忘れることはないと思う。


「菅原先輩にお姉さんがいたなんて知らなかったので、驚きました!しかもこんなすてきなカフェをやってるなんて」


「少し弟に構いすぎな気もするけど、優しい姉さんだよ」


「ふふっ、なんだかうらやましいです。私、ひとりっ子なので」


 菅原先輩にはお姉さんが、椿には弟がいる。兄弟ってなんだかいいな。


 藤宮くんは、兄弟っているのかな…?

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