私の恋がはじまった日
こんなこともあろうかと、いつも置きっぱなしにしてるんだ。
教室に引き返し、私は自分のロッカーをのぞいた。
「あれ…?ない…?」
そこに折り畳み傘はなかった。
そこではっと、思い出すことがあった。
「そうだ…この前桜ちゃんに貸しちゃったんだ…」
数日前。午後から雨が降り出した日。
私は長い傘を持ってきていた。
「あー!雨降ってるじゃん!私、傘ないよぉ…」
なげく桜ちゃんに、私はロッカーに置いていた折り畳み傘を渡したんだ。
「桜ちゃん、これ、よかったら使って」
「ええ!?いいの?」
「うん!私、長い傘持ってきてるから」
「ありがとー!みおちん!私の親友~!!」
大げさに喜ぶ桜ちゃんに笑いながら傘を渡したのだ。
「そうだ、そうだった……」
それからまだ、桜ちゃんから傘を返してもらってなかったんだ…。
「どうしよう……」
外は相変わらずの土砂降り。
私はまたも昇降口で立ちつくすことになった。