私の恋がはじまった日

 ピカッッ!!!


 辺り一面がいっそう明るくなった。


 かと思うと、ドーンっと地鳴りのような音が響き渡る。


「きゃっ…!!」


 私はあわてて耳をふさいだ。


 うう~雷は苦手なのに……。早く帰りたい、どうしよう……。


「佐藤」


「ひゃあっ!!!??」


 肩になにかが触れて、私は飛び上がった。


 あわてて距離をとってから確認すると、目の前には藤宮くんが立っていた。


「ふ、藤宮くん!?!?」


「驚かせるつもりはなかったんだけど」


 肩に触れたのは、藤宮くんの手だったみたい。び、びっくりしたぁ…。


「こんなところでなにしてんの?」


 そういえば、藤宮くんと二人きりで話すの、この前以来だ。


 まだどんな顔して話していいのかわからないよ…。


 私は視線を雨にうつして、小さく答える。


「帰ろうと思ったんだけど、雨が降ってきちゃって…。藤宮くんこそ、どうしてこんなに帰りが遅いの?部活入ってたっけ?」


「いや、委員会の集まりがあったんだ。で、そのあとは委員会の当番」


「そ、そうなんだ…」


 よかった…。ふつうに話せてる。


 藤宮くん、油断するとすぐに私のことからかってくるから。


「で、佐藤は傘を忘れて、途方にくれてたんだな」


「うっ…」


「本当、ドジだな、お前」


「ううっ…!」


 でも今日ばかりは言い返せない。


 お母さんにも言われてたのに、傘を忘れてきちゃったんだもん…。


 私ががっくりと肩を落としていると、藤宮くんは靴に履き替えて、折り畳み傘を広げた。

< 47 / 92 >

この作品をシェア

pagetop