私の恋がはじまった日
「家、どっち?」
「え?」
「同じ方向なら、入れてやってもいいけど」
「本当!?」
私が家の方角を指差すと、藤宮くんは「行くぞ」と言ってさっさと歩き出してしまう。
「あ、待ってよ!」
どうやら藤宮くんのお家も私のお家と同じ方角だったみたい。よかった~!
私は藤宮くんの横に並ぶと、少し距離を開けて傘に入った。
「そんなに離れてるとぬれるぞ」
「え、でも」
「いいから」
肩を抱き寄せられて、とんっと私の肩と藤宮くんの肩がぶつかってしまった。
それだけのことが、なんだかやたらと恥ずかしい。
「ご、ごめんね…」
ぶつかってしまったことを謝ったのだけれど、藤宮くんは特に気にしていないようだった。
またピカっと空が光る。
「ひっ!」
またあの大きな雷の音がするのかと身構えていたけど、遠くでゴロゴロと鳴っただけだった。
私は思わず「ふう…」と安堵(あんど)の息をもらした。
「雷、苦手なのか?」
「あ、うん…ちょっとだけ…」
本当はちょっとどころかかなり苦手なんだけど、また藤宮くんにからかわれるんじゃないかって、ちょっと嘘ついちゃった。
沈黙がなんだか気まずい…。
藤宮くんと話せるような話題って、なにかあるかな…。
目線を上に上げると、藤宮くんの傘の紺色が目に入る。